読書|《下流老人》-外国人の私はこのように思っている

 頼れる親族がいなく、収入もなし、働こうとしても、年を取ったせいで体が重く、思うようには動けない。では、どのように生活するかというと、ただひたすら道端に生える野草をを食べて飢えをしのぐという。これは、遠い国の話ではなく、昔の日本の話でもない。これは現代の日本に実際に起きたことである。

 現在、日本に下流老人が増え続けている。下流老人とは、収入が少なく、貯蓄もなし、社会的に孤立する人のことである。平たく言えば、あらゆるセーフティネットを失った人のことである。下流老人が形成される原因は多く、単に「自己努力」や「自己責任」など、たった一言で済ますほど簡単な問題ではない。これはもっと複雑で、深刻な社会的な問題だと、この本から十分伝わってくる。それに、下流老人になる人は大体若いときから貧乏な人が多い、収入が少ない仕事に携わるから下流老人になる、そう思う人が少なからずいるであろう。しかし、実際に本書で書かれた実例から見ると、銀行員や大手企業といった世間から見ると収入が高いと思われる職業に就く人たちでも下流老人になり得る。彼らの共通の問題点として、貯金は十分に蓄えたと思っていたことである。しかし、中年になって、突然大きな病気を患って、そこで貯金を全部使い切って、結局下流老人になってしまった例が数多く見受けられる。つまり、下流老人は収入の多寡とは関係なく、誰でもなり得るものである。

 では、この現象をいかに防止するかというと、本書では下流老人の予防対策として社会保障制度や医療制度などをもっと整えるべきだと主張している。それは確かに重要なことではあるが、私はそれより、むしろ個人のメンタルの問題に注目してほしいと思う。下流老人の中には、生活に困っていても誰の助けも受けない、自分の困窮を誰にも伝えない、自分一人の力でなんとか乗り越えようとして結局倒れてしまった人が大勢いる。その現象は、日本人の「誰にも迷惑を掛けない」という思いやりから生まれたものだと言っても過言ではないのであろう。「思いやり」は時々人を殺す、と私は思う。本当に生きていられないときは、プライドを捨てて誰かに助けてもらおう。

 最近、「逃げる(逃げるの)は恥だが役に立つ」という言葉がよく耳にする。これは元々ハンガリー語の諺だそうで、逃げるのは確かに恥ずかしいことだが、生きるために逃げてもいいという意味である。なぜなら、プライドより、生きることがはるかに大切なのである。



Info

《下流老人 一億総老後崩壊の衝撃》

著者:藤田孝典

出版:朝日新書

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3分間って何ができるの? 忙しい日々を送る人々のために、私たちは3分間で読める記事を書いてみた。

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